紹介論文
Food Coloring Additives and Incidence of Type 2 Diabetes in the NutriNet-Santé Prospective Cohort
(NutriNet-Santé前向きコホートにおける食品着色料添加物と2型糖尿病の発症率)
Shah S, et al. Diabetes Care 2026;49(6):1067-1077.
Take-home Message
フランスの大規模疫学調査(約10万8千人を対象)により、食品着色料の継続的な摂取が2型糖尿病の発症リスクを有意に上昇させることが世界で初めて示された。
人工着色料だけでなく、β-カロテン、クルクミン、カラメル色素といった「天然由来」の着色料でも糖尿病リスクの上昇が確認された。
超加工食品(UPF)を避けるべき新たな理由として、食品添加物(着色料)そのものが代謝に悪影響を及ぼす可能性が浮き彫りになった。
要約
近年、超加工食品(UPF)の摂取が2型糖尿病の発症リスクを高めることが報告されているが、UPFの代表的な指標である「食品着色料」自体が代謝に与える長期的影響については、これまで前向きな疫学研究が存在しなかった。
本研究は、フランスのNutriNet-Santéコホートに参加した108,723人(平均年齢42.5歳、女性79.2%)を対象に、食品着色料の摂取量と2型糖尿病発症の関連を中央値8.05年間にわたり追跡調査したものである。食事記録から市販品のブランドレベルまで詳細に解析し、着色料の累積曝露量を算出した。
追跡期間中に1,131人が2型糖尿病を発症した。年齢、性別、BMI、運動習慣、家族歴、さらには食事の栄養価(総エネルギー、糖質、飽和脂肪酸など)や超加工食品の摂取量といった多くの要因を統計的に調整した結果、以下の食品着色料の摂取量が多いグループで、2型糖尿病の有意なリスク上昇が認められた。

以上の結果から、天然か合成かを問わず、広く使用されている食品着色料の曝露が2型糖尿病の発症と関連していることが示唆された。
さらに本研究で特筆すべきは、同じ化学成分であっても「添加物として摂取」するか「食品から天然に摂取」するかでリスクが明確に分かれた点である。野菜や果物などからβ-カロテンやクルクミンを「天然の形で摂取」した場合には、2型糖尿病の発症リスク上昇は一切認められなかった。

以上の結果から、本来は自然界に存在する天然色素であっても、人為的に単離抽出されて「添加物」として摂取された場合には代謝への影響が異なり、2型糖尿病の発症リスクと関連することが示唆された。
※本研究はあくまで関連を示した観察研究であり、因果関係の証明には今後のメカニズム研究・他集団での再現・介入研究が必要です。
【面白かった点・臨床的な意義】
本論文の最も衝撃的で面白かった点は、人工着色料だけでなく、β-カロテンやクルクミン(ウコンの色素)といった「健康に良さそうなイメージのある天然色素」であっても、添加物として抽出・使用された場合には糖尿病リスクの上昇と関連していたという事実です。
著者の考察にもある通り、同じ成分でも「野菜や果物から自然な形で(食物繊維などの複雑なマトリックスと共に)摂取する」のと、「食品添加物として単離抽出されたものを加工食品から摂取する」のとでは、腸内環境や代謝に与える影響が全く異なる可能性があります。 また、これらの着色料は細胞の酸化ストレスや腸内細菌叢の乱れを引き起こし、インスリン抵抗性に関与する可能性が基礎研究でも示唆されています。
日々の診療における食事指導では、つい「カロリー」や「糖質量」といった数値の管理に偏りがちです。しかし本研究は、「不自然に色鮮やかなものや、成分表示に沢山のカタカナが並ぶような加工食品をなるべく避ける」といった、直感的で患者さんにも実践しやすい「本質的な食の選択」を後押しする強力なエビデンスになると感じました。
栄養学的な数値管理だけでは見えてこない食品添加物がもたらす代謝への影響に目を向け、より根本的な病態介入の視点を持つための非常に良いきっかけとなりました。